新人SEとして配属されたものの、
- 何から覚えればよいのか分からない
- 質問するタイミングが難しい
- 周囲についていけていない気がする
- 技術力が足りないのではないかと不安になる
そんな悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
SEの仕事というと、プログラミングやシステム設計などの技術力が注目されがちです。
もちろん技術力は大切です。しかし、現場に入って最初の3か月で特に意識したいのは、難しい技術を一気に身につけることではありません。
まずは、周囲とコミュニケーションを取りながら、任された仕事を着実に進めるための「仕事の基本」を身につけることが重要です。
私はこれまで約25年間、銀行システムの開発や保守に携わってきました。多くの新人や若手SEと仕事をする中で感じるのは、最初から何でもできる人はほとんどいないということです。
一方で、成長が早い人には共通する行動があります。
この記事では、新人SEが最初の3か月で身につけておきたい仕事術を5つ紹介します。
特別なスキルではありません。明日から少しずつ実践できる内容です。
新人SEの最初の3か月は「できることを増やす期間」
新人SEとして働き始めると、周囲の先輩が何でも知っているように見えるかもしれません。
会議で飛び交う専門用語が分からない。設計書を読んでも内容が頭に入らない。簡単そうに見える作業にも時間がかかる。
そのような状態は、決して珍しくありません。
新人のうちは、仕事ができないのではなく、まだ仕事の進め方を知らないだけです。
最初の3か月で目指したいのは、周囲と同じレベルで仕事をすることではありません。
次のような状態を少しずつ作ることが大切です。
- 分からないことを整理して質問できる
- 指示された内容を自分なりに確認できる
- 作業の進み具合を周囲に伝えられる
- 同じミスを繰り返さない
- 自分で調べる習慣を持つ
この基本が身につくと、その後の技術習得もスムーズになります。
仕事術1.指示を受けたら「自分の言葉」で確認する
新人SEが最初に身につけたいのは、指示内容を正しく理解する力です。
仕事では、先輩や上司から次のような指示を受けることがあります。
「この設計書を確認しておいてください」
「ログを調べて、原因を整理してください」
「テスト結果をまとめてください」
一見すると分かりやすそうですが、実際には確認すべきことがいくつもあります。
たとえば、「設計書を確認する」と言われた場合でも、
- どの範囲を確認するのか
- 誤字脱字を見るのか
- 内容の妥当性まで確認するのか
- いつまでに終わらせるのか
- 結果をどのような形式で報告するのか
によって、作業内容は大きく変わります。
指示をそのまま受け取らない
指示を受けたときは、内容を自分の言葉で言い換えて確認してみましょう。
たとえば、次のような確認です。
「対象はこの設計書の3章までで、記載内容と実際の動作に差がないかを確認し、今日中に結果を一覧で共有する認識で合っていますか」
この確認をするだけで、認識違いをかなり減らせます。
確認することに遠慮を感じる必要はありません。
むしろ、分からないまま作業を進め、数時間後に方向性が違っていたことが分かるほうが、本人にも周囲にも負担がかかります。
メモを取り、作業開始前に整理する
指示を受けたら、最低限、次の内容をメモしておくと安心です。
- 作業の目的
- 対象範囲
- 完了条件
- 期限
- 報告方法
SEの仕事では、作業そのものよりも、「何をもって完了とするか」が曖昧になりやすい傾向があります。
作業を始める前に完了条件を確認しておくと、迷いが少なくなります。
仕事術2.質問は「調べたこと」とセットで伝える
新人のうちは、分からないことが多くて当然です。
ただし、分からないことが出るたびに「分かりません」と聞くだけでは、回答する側も状況を把握しにくくなります。
質問するときは、自分がどこまで調べ、何が分からないのかを整理して伝えることが大切です。
良い質問は相手が答えやすい
たとえば、次の2つの質問を比べてみてください。
「このエラーはどうすればよいですか」
これだけでは、相手は状況を一から確認しなければなりません。
一方で、次のように伝えると、質問の意図が明確になります。
「テスト実行時に接続エラーが発生しています。ログを確認したところ、データベースへの接続に失敗しているようです。接続先とユーザー情報は確認しましたが問題が見つかりませんでした。次に確認すべき点を教えていただけますか」
この質問には、次の情報が含まれています。
- 何をしていたのか
- 何が起きたのか
- 何を確認したのか
- どこで行き詰まっているのか
質問の質が高いと、回答も早くなります。
15分から30分を目安に区切る
分からないことを何時間も一人で抱える必要はありません。
とはいえ、何も調べずにすぐ聞くと、自分で考える習慣が身につきにくくなります。
一つの目安として、15分から30分程度調べても進まない場合は、一度質問するのがおすすめです。
調べる時間は、作業の難易度や緊急度によって変わります。
重要なのは、長時間抱え込まず、自分で調べた内容を整理して相談することです。
銀行システムのように、影響範囲が広く、慎重な判断が求められる現場では、早めの相談が問題の拡大を防ぐこともあります。
質問することは、能力不足の証明ではありません。仕事を止めないための大切な行動です。
仕事術3.進捗は「問題が起きる前」に共有する
新人SEの仕事で意外と難しいのが、進捗報告です。
順調に進んでいるときは報告しやすいものの、予定より遅れているときや、問題が発生したときは、つい報告を後回しにしたくなります。
しかし、報告が必要なのは、むしろ予定どおりに進んでいないときです。
完了してから報告する必要はない
進捗報告は、作業が終わったことを知らせるだけではありません。
途中の状態を共有し、必要に応じて軌道修正するために行います。
たとえば、次のような内容を伝えます。
「全10件のうち6件まで確認が完了しています。残り4件のうち1件で仕様が判断できず、確認に時間がかかっています。このままでは予定より1時間ほど遅れる可能性があります」
この報告があれば、先輩や上司は対応を考えられます。
- 仕様を確認する
- 別の担当者に相談する
- 作業の優先順位を変える
- 期限を調整する
報告が遅れると、周囲が対応する時間も少なくなります。
悪い情報ほど早く伝える
システム開発では、不具合や作業遅延を完全になくすことはできません。
特に大規模なシステムでは、一つの遅れが後続作業に影響することもあります。
私自身、長く現場に関わる中で、問題そのものよりも、共有が遅れたことで対応が難しくなる場面を何度も見てきました。
ミスや遅れが発生したときに大切なのは、隠さないことです。
次の3点を整理して伝えると、報告しやすくなります。
- 現在起きていること
- 現時点で分かっている原因
- 今後どのように対応する予定か
原因や対応方法が分からない場合は、分からないことも含めて伝えて問題ありません。
早めに共有する人は、周囲から信頼されやすくなります。
仕事術4.同じ指摘を繰り返さない仕組みを作る
新人のうちは、レビューや作業確認で多くの指摘を受けます。
指摘を受けると落ち込むこともあるかもしれません。
しかし、最初から指摘を受けない人はほとんどいません。
大切なのは、指摘をゼロにすることではなく、同じ指摘を繰り返さないことです。
指摘内容を記録する
レビューで指摘を受けたら、その場で修正するだけで終わらせず、内容を記録しておきましょう。
たとえば、次のように分類します。
- 記載漏れ
- 認識違い
- 確認不足
- ルール違反
- 誤字脱字
- 技術的な理解不足
記録を続けていると、自分がどのようなミスをしやすいのかが見えてきます。
「影響範囲の確認が漏れやすい」
「ファイル名や日付の更新を忘れやすい」
「前提条件を書かずに説明してしまう」
このような傾向が分かれば、作業前や提出前に確認できます。
自分専用のチェックリストを作る
指摘内容は、チェックリストにすると実践しやすくなります。
設計書を提出する前であれば、次のような項目が考えられます。
- 対象範囲に漏れがないか
- 前提条件が書かれているか
- 関連資料と内容が一致しているか
- 日付や版数が正しいか
- 誤字脱字がないか
最初は5項目程度でも構いません。
チェックリストは、経験を積むたびに増やしていくものです。
25年間仕事をしていても、確認漏れを完全に防ぐのは簡単ではありません。経験が増えるほど記憶だけに頼らず、仕組みで防ぐことが重要だと感じます。
チェックリストを使うことは、初心者だから必要なのではありません。
安定して仕事を進めるための、基本的な仕事術です。
仕事術5.作業の背景と目的を少しずつ理解する
新人のうちは、先輩から指示された作業をこなすことで精いっぱいになりがちです。
それでも問題はありません。
ただし、慣れてきたら「なぜこの作業をしているのか」を少しずつ考えてみてください。
作業の目的が分かると判断しやすくなる
たとえば、テスト結果を確認する作業でも、目的によって見るべきポイントは変わります。
- 機能が正しく動くことを確認したいのか
- 障害発生時の動作を確認したいのか
- 処理性能に問題がないか確認したいのか
- 証跡として結果を残したいのか
目的が分からないまま作業すると、手順どおりに進めることだけがゴールになってしまいます。
一方で、背景や目的を理解していると、想定外の結果が出たときにも気づきやすくなります。
すべてを一度に理解する必要はない
システム全体を最初から理解しようとすると、情報量が多すぎて疲れてしまいます。
まずは、自分が担当している作業の前後だけを確認してみましょう。
- この作業の前に誰が何をしているのか
- 自分の作業結果を誰が使うのか
- 間違えた場合にどこへ影響するのか
この3点を知るだけでも、仕事の見え方が変わります。
銀行システムの開発では、一つの機能が複数のシステムや業務と関係していることがあります。
新人のころから全体を理解するのは難しいですが、担当範囲の周辺を少しずつ知ることで、点だった知識が線につながっていきます。
分からない言葉や仕組みが出てきたら、メモを残しておき、時間があるときに調べる習慣をつけるとよいでしょう。
新人SEが最初の3か月で無理に身につけなくてもよいこと
ここまで仕事術を紹介してきましたが、最初から完璧にできる必要はありません。
特に、次のようなことを焦って身につけようとしなくても大丈夫です。
すべての専門用語を覚える
現場では、技術用語だけでなく、業務用語や社内独自の略語も多く使われます。
一度で覚えられなくても問題ありません。
分からない言葉をメモし、必要になったときに調べる形で十分です。
一人で問題を解決する
新人のうちから、すべてを一人で解決する必要はありません。
自分で調べることと、誰にも相談しないことは別です。
一定時間調べても分からない場合は、早めに相談しましょう。
先輩と同じスピードで作業する
経験のある先輩は、過去の知識や似た事例を使って判断しています。
新人が同じスピードで作業できないのは当然です。
最初は速さよりも、認識を合わせながら丁寧に進めることを意識してください。
最初の3か月で意識したい1日の振り返り
仕事術を身につけるためには、毎日の振り返りが効果的です。
退勤前に5分だけ時間を取り、次の内容を振り返ってみましょう。
- 今日できるようになったこと
- 今日分からなかったこと
- 明日確認すること
- 今日受けた指摘
- 次回気をつけること
長い日報を書く必要はありません。
数行でも記録を続けると、自分の成長が見えるようになります。
新人の時期は、できなかったことに目が向きやすいものです。
しかし、1週間前には分からなかった作業ができるようになっていることもあります。
小さな変化を記録することで、不安を減らしながら仕事を続けやすくなります。
まとめ|新人SEは仕事を一人で抱え込まないことが大切
新人SEが最初の3か月で身につけたい仕事術は、次の5つです。
- 指示を受けたら自分の言葉で確認する
- 質問は調べたこととセットで伝える
- 進捗は問題が起きる前に共有する
- 同じ指摘を繰り返さない仕組みを作る
- 作業の背景と目的を少しずつ理解する
どれも、すぐに完璧にできるものではありません。
まずは一つだけでも意識してみてください。
SEの仕事では、技術力だけでなく、周囲と認識を合わせ、問題を早めに共有し、経験を次の仕事に生かす力が求められます。
私も長くシステム開発に携わっていますが、今回紹介した基本は今でも大切にしています。
新人の最初の3か月は、成果を急ぐ期間ではなく、仕事の進め方を覚える期間です。
分からないことを抱え込まず、周囲の力を借りながら、一つずつできることを増やしていきましょう。
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