「メモは取ったのに、あとで見返したら意味が分からない」
「同じことを先輩にもう一度聞いてしまった」
新人SEの最初の3か月は、システム構成、業務用語、開発ルール、作業手順など、覚えることが一気に増えます。すべてを記憶だけで管理するのは現実的ではありません。
そこで役立つのがメモです。ただし、聞いた言葉をそのまま並べただけでは、実際の仕事で使えるメモになりません。大切なのは、「あとで何に使うのか」を考えて情報を整理することです。
私も銀行システムの開発・保守に25年以上携わるなかで、記録の大切さを何度も実感してきました。担当者の記憶は時間とともに薄れますが、目的と根拠を整理したメモは、調査の再開、認識合わせ、引継ぎに長く役立ちます。
この記事では、新人SEが身につけたいメモ術を、次の3つに分けて解説します。
- 議事録:決まったことを残す
- 調査メモ:事実と試したことを残す
- 引継ぎメモ:他の人が再現できる形で残す
新人SEのメモは「記憶」ではなく「次の行動」を助けるもの
仕事のメモは、情報を保存すること自体が目的ではありません。会議後に対応事項を実行する、調査を途中から再開する、別の担当者へ作業を渡すなど、次の行動につなげるために残します。
| メモの種類 | 主な目的 | 特に残す情報 |
|---|---|---|
| 議事録 | 関係者の認識をそろえる | 決定事項・宿題・期限 |
| 調査メモ | 調査を再現・継続する | 事象・条件・実施内容・結果 |
| 引継ぎメモ | 別の人が作業できるようにする | 目的・手順・判断基準・注意点 |
三つを同じ書き方にする必要はありません。用途に合わせて残す項目を変えることが、使えるメモへの近道です。
1.議事録は発言録ではなく「会議の結果」を残す
新人SEが初めて議事録を担当すると、発言を一言も漏らさず書こうとしがちです。しかし、会話をすべて書き起こすと、重要な決定事項や対応事項が埋もれてしまいます。
会議前に枠を作っておく
会議が始まってから白紙に書き始めるのではなく、事前に次の項目を用意します。
- 日時・参加者
- 会議の目的・議題
- 決定事項
- 未決事項・確認事項
- 対応事項・担当者・期限
アジェンダや前回議事録があれば、先に貼り付けておきます。会議中は該当箇所へ追記できるため、話を聞くことに集中しやすくなります。
決定・未決・対応を区別する
議事録で最も避けたいのは、「話題には出たが決まっていないこと」を決定事項のように書くことです。次のように分類を明記します。
- 決定:会議で合意した内容
- 未決:判断を保留した内容
- 対応:会議後に実施する内容
対応事項には「誰が」「何を」「いつまでに」を入れます。「確認する」だけでは、担当者も期限も分からず、そのまま止まる可能性があります。
会議後はできるだけ早く確認する
会議中の略語や断片的なメモは、時間がたつほど意味を思い出しにくくなります。会議後30分以内を目安に整理し、不明点は参加者へ確認しましょう。
議事録を共有する目的は、文章力を評価してもらうことではありません。認識違いを早く見つけ、次の行動を確定させることです。「認識が異なる点があればご連絡ください」と添えると、確認を依頼しやすくなります。
2.調査メモは「何を試して、どうなったか」を残す
エラーや不具合の調査では、同じ検索や操作を繰り返してしまうことがあります。調査メモがあれば、自分の現在地が分かり、先輩へ相談するときも正確に説明できます。
最初に事象と条件を書く
調査の最初に、次の情報を整理します。
- 何が起きているか
- いつ、どの環境で発生したか
- どの操作やデータで発生したか
- 期待する結果と実際の結果
- 再現するか、毎回発生するか
「画面が動かない」ではなく、「テスト環境で登録ボタンを押すと、10時15分にエラーコードABC123が表示され、データは登録されない」のように、観察した事実を具体化します。
一つの確認ごとに仮説・操作・結果をセットで残す
調査メモは、時系列に操作だけを並べるより、次の三つをセットで残すと役立ちます。
- 仮説:何が原因だと考えたか
- 確認:何を調べた、または実施したか
- 結果:何が分かり、候補がどう変わったか
「仮説:入力値の桁数が原因。確認:正常データと異常データの桁数を比較。結果:どちらも10桁で差はなく、この仮説は可能性が低い」
原因ではなかった確認も残します。失敗ではなく、候補を一つ減らした有効な結果だからです。
検索語と参照資料を記録する
検索したキーワード、参照した公式マニュアルの名称やURL、対象バージョンを残しておくと、後から根拠を確認できます。ただし、社内情報、ログ、ソースコードを許可なく外部サービスへ入力してはいけません。情報の保存先や共有範囲も、現場のルールに従いましょう。
3.引継ぎメモは「初めての人が再現できるか」で考える
引継ぎメモでは、作業手順だけでなく、作業の目的、実施条件、判断基準、間違えた場合の影響まで伝える必要があります。
最初に目的と完了条件を書く
手順の前に、「何のための作業か」「どこまで終われば完了か」を書きます。目的が分かれば、手順と実際の状況が違う場合にも、引継ぎ相手が異常に気づきやすくなります。
- 作業の目的
- 実施する時期・条件
- 事前に必要な申請・権限・ファイル
- 完了を確認する方法
判断が必要な箇所に基準を添える
「必要に応じて再実行する」「エラーがあれば担当者へ連絡する」だけでは、初めての人は判断できません。
「終了コードが0なら正常終了」「エラーコードABC123の場合のみ1回再実行」「それ以外は再実行せず運用責任者へ連絡」のように、判断条件と行動を対応させます。
メモだけを見て作業を再現する
完成したら、自分でメモだけを見て作業をたどります。ファイルの保存場所、最新版の見分け方、入力値、確認画面など、自分には当たり前でも文章に書かれていない情報が見つかります。
可能であれば、引継ぎ相手にメモを見ながら作業してもらい、迷った箇所を追記します。引継ぎは「説明したら完了」ではなく、「相手が実施できる状態になったら完了」です。
新人SEがメモで陥りやすい3つの失敗
1.保存場所が分散して見つからない
紙、個人用ファイル、チャットの下書きなどへ分散すると、必要なときに探せません。日付・案件・用途など、自分なりの保存場所と名前のルールを決めましょう。
2.単語だけで前提が残っていない
「確認する」「修正必要」だけでは、対象も理由も分かりません。「誰が・何を・なぜ・いつまでに」のうち、必要な情報を補います。
3.きれいに作ることへ時間を使いすぎる
見た目を整えることより、正しい内容を早く残すことが優先です。まず箇条書きで記録し、共有に必要な範囲だけ整えれば十分です。
そのまま使えるメモの共通テンプレート
【目的】 このメモを何に使うか: 【対象・条件】 日時/環境/対象: 【確認できた事実】 ・ 【決定・結果】 ・ 【次の行動】 担当者: 対応内容: 期限: 【未確認・注意点】 ・
議事録なら「決定・次の行動」を厚くし、調査メモなら「対象・条件・事実」を詳しくします。引継ぎメモなら「目的・手順・注意点」を補うなど、用途に合わせて使ってください。
新人SEのメモ術チェックリスト
- メモの目的が最初に分かる
- 事実と自分の考えを区別している
- 決定事項と未決事項を分けている
- 対応事項に担当者と期限がある
- 調査の条件、操作、結果が残っている
- 初めて読む人でも対象と次の行動が分かる
- 機密情報を適切な場所へ保存している
まとめ:使えるメモは仕事の再現性を高める
新人SEがメモを取る目的は、すべてを記録することではありません。あとで自分や他の人が迷わず次の行動へ移れる状態を作ることです。
- 議事録では、決定事項・未決事項・対応事項を分ける
- 調査メモでは、事象・仮説・確認・結果を残す
- 引継ぎメモでは、目的・判断基準・完了条件を伝える
まずは、メモの先頭に「目的」、最後に「次の行動」を書くところから始めてみてください。短いメモでも、仕事で使える情報へ変わります。



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